2022年12月30日(金)日経新聞
「生きづらさを考える『らしさ』の呪縛」
奥田祥子・近畿大学教授
(経済教室)
引用
「人生で直面する様々な困難や苦悩が、「生きづらさ」という言葉で語られる機会が増えた。筆者は生きづらさは個人に起因する問題ではなく、社会構造を問うべき課題として捉えている。」
とあった。
生きづらさが、個人の性格や資質の問題だけではないといわれて久しい。
この記事では、経済・教育・政治参加における男女間の不均衡(ジェンダーギャップ指数)や、幸福度調査で女性より男性の方が幸福度が低いことなどにふれ、生きづらさの根底にあるのは、旧来の「男らしさ」のジェンダー規範であると指摘する。
女性も男性に旧来の「男らしさ」求めているところがあり、男女問わず、役割分担意識は根強い。これはその通りだなぁと感じる。
一方で、「女性の方が幸福度が高い」という幸福度調査については、過去に朝日新聞で、「適応的選好形成」というものが掲載された。
2022年6月22日(水)朝日新聞朝刊
「 満足度調査が覆う 苦境への順応」
山本咲子さん
「『女性は男性より幸福度が高い』
『だから女性の支援は後回し』
という議論の危うさ
適応的選好形成とは何か?」
引用
「適応的選好形成とは、人は置かれた状況に適応し選考(何を持って満足と感じるか)を形成する可能性があるとする概念だ。
経済学者アマルティア・センは、不安定な雇用状態で働く人や従属を強いられる主婦といった持続的な被差別状態にある人は、
『不満を言い続けない』など適応的選好形成の影響を受けやすいと指摘した。」
これは…困ったなと感じた。
昔、渡辺和子さんの「置かれた場所で咲きなさい」という本があったが、それは、「適応的選好形成」だったのだろうか。
それでも、幸福と感じているなら良いのでは?という考えもあるだろう。わたしはそうは思わないが。
今年、選択的夫婦別姓に関する世論調査で、「賛成」とする人の割合が、過去最低という結果がでた。
内閣府が質問内容や順番を変えて、結果を操作したと激しく批判された。
調査結果というのは、質問のしかたや、時間、場所などによっても大きく変わる。
そして、間違った目的に最速でたどり着く政策が施行される…怖い。
自分に見えているものの小ささや、自分が感じているものの不確かさを思わずには、いられない。
毎日の小さな幸せの積み重ねは、適応的選好形成かもしれない。